森林計画業務で使われるクラウドシステム(北海道の事例)
北海道では、平成25年度からクラウドシステムを導入し、森林計画業務に活用しています。
● なぜクラウドの導入に至ったのか?
実効性の高い森林計画を運用していくためには、市町村と都道府県で森林計画に必要な情報をいかに円滑に共有していくかが重要です。
北海道では、森林計画制度の基礎となる情報である、森林簿等の精度向上のため、市町村の有する各種届出情報をできるだけリアルタイムで反映するため、独自に「森林計画クラウドシステム」を開発し、平成25年12月から運用を開始しています。
今回の活用事例レポートでは、ひと足早くクラウドの仕組みを森林計画業務に取り入れた北海道水産林務部 林務局 森林計画課の取り組みを紹介します。
(注:北海道で導入したクラウドは、森林クラウド実証事業内で開発・検証しているシステムではありません。)
● 導入したクラウドシステムの仕組みは?
北海道が開発した森林計画クラウドシステムは、主に森林計画制度で必要となる森林簿情報、森林経営計画情報、土地所有者届出情報、伐採届出情報といった帳票データと、森林計画のための業務を支援するシステムを外部のクラウドサーバ上で運用する仕組みとなっています。(図1)
特にセキュリティについては、以下3段階の対策を施しています。
1段階目:サーバ段階の管理
ウイルスソフトの更新(月2回以上)、ファイアウォールの設置、24時間体制の有人監視、災害に対するサーバセンタの基準の設定
2段階目:回線の管理
通信の暗号化によるデータ流出対策
3段階目:ユーザ管理
パスワードの定期更新の義務付け、ダウンロード情報の自動消去等、利用可能データ・システム範囲の設定、利用可能パソコンの制限(ユーザ毎1台)
図1 森林計画クラウドシステムの概要(出所:森林計画研究会 会報 第462号 p29)
● クラウドの導入で何が変わったのか?
「森林計画照査システム」は、北海道が森林簿情報の更新を行うシステムとなっています。
このクラウドシステムの導入により、以下の効果がありました。
▼森林簿情報のリアルタイム更新
各種届出情報の市町村との迅速な共有の実現により、年末に集中していた森林簿の更新に必要な情報収集作業が随時行えるように
▼市町村・森林組合との最新情報の迅速な共有
随時更新された最新の森林簿情報を、クラウドを通して市町村・森林組合と共有できるように
「森林経営計画認定プログラム」は、森林経営計画の作成支援から認定業務までを行うシステムとなっています。
このクラウドシステムの導入により、以下の効果がありました。
▼法令改正への迅速・確実な適応
これまでは改正の度にシステムの改修を行い、個別に配布・インストールしていましたが、クラウドにより利用者全員が最新のシステムをすぐに利用する事が可能に
▼森林簿への森林経営計画の認定状況の反映の全自動化
従来手作業で行っていた森林経営計画の認定状況の小班への入力作業が、データベースサーバ(森林簿情報と森林経営計画情報)の統一により全自動で可能に
「土地所有者届出等管理プログラム」及び「伐採及び伐採後の造林の届出のプログラム」は、市町村での各届出の事務処理から北海道との情報共有までを行うシステムとなっています。
このクラウドシステムの導入により、以下の効果がありました。
▼届出内容と森林簿情報等の突合作業の自動化による事務処理の軽減
▼届出情報のリアルタイム確認による伐採箇所の把握(違法伐採・不適切施業の確認)
北海道では、森林計画クラウドシステムのメリットを次のようにまとめています。
・常に最新の情報が共有できる。
・複数のシステムやデータベースの連携が自動化できる。
・森林簿の精度向上が図られる。
・過去の森林資源や届出を迅速に確認できる。
・サーバでのデータ一括保護によりセキュリティの向上が図られる。
(森林計画研究会 会報 第462号 「森林計画業務におけるクラウドコンピューティングの活用」を要約)